自著にも書きましたが、友人のデザイナーと一緒に参加したある講演会で、ファッションデザイナーの山本耀司さんがおっしゃったキーワードに「ファッションセンスのうち、形と色は後天的に鍛えられる。しかしボリューム感は先天的なものだ」と話されていました。
この当時、クリエイターとしてのセンスは鍛えられものかどうか考えていた時でしたので、「形と色は後天的に勉強できる」という山本耀司さんの言葉は、とても心強く感じました。私はこのワードに救われる気がしました。
この話の追記をしたいと思います。
ファッションでボリューム感は確かに難しいのは経験からも分かります。
服にはさまざまな歴史が有ります。そしてそれらの物語が、服のイメージをきめていきます。
例えばピーコートは海軍の軍服から、レジメンタルタイは学校の校章、などです。
ピーコートは寒さから守るためにダブルで大きな襟は立てて留めればネックゲイターになります。このような機能から生まれたデザインですから今でも生きた機能美として通用します。
機能美のあるデザインはいつの時代も通用します。なぜなら長い年月をかけて実用性を試行しながら作り出した合理性が、使い手・作り手双方に無駄のない完成されたものになっているからです。
長い年月をかけて存在してきたものには存在する理由があります。その理由を感じられるからこそ、デフォルトデザインとなれるわけです。
ですから今までに見たことのない服を作ることだけが最新のファッションとはなりません。
見たことのないファッションはショー専用ということになりやすく、街なかで着ることができるリアルクローズにはなかなかなりません。
服の印象は、カラー、ボリューム、質感で決まります。
遠くからでも判別できるこれら3要素がファッションの印象を決めるという意味で大切です。
色や質感はテンション(テンションについて詳しくはこちら)に非常に大きな変化をもたらします。
カラーは着るシーンに応じてある程度、色相が限定されることが求められます。例えば弔意の式典にダークカラー以外を着ていくことは憚られます。質感も同様にフォーマルな席でカジュアルな質感は避けるべきとされます。
そして過去にカッコ良いとされたデザインを現代風に再解釈したい。とファッションの変化をアピールするためには、ボリュームを少しだけ変えることが効果的です。
カラーや質感は少しだけ変えたのでは変化に対するインパクトが少なく、大きく変えると着るシーンが全く変わってしまうためです。
ですから現在から飛躍し過ぎないAcceptable(受け入れやすい)なデザインを作るにはボリューム感を変化させることがとても効果的になるわけです。
ビジネスパーソンのみなさんもスーツのシルエットを作るダーツ・ショルダー・ラペル・着丈やパンツの股上・わたり・裾幅など、ボリューム感を変えることでトレンド感を演出していることは体感していると思います。
私の先輩でとてもセンスの良い方がいます。
その方は決してハイファッションを身にまとっているわけではありませんが、デニムのカットオフの長さを微妙に調整して履いたり、オーバーサイズのTシャツの袖を計算してまくり上げたり、服のボリュームを少し変化させることで、とても洒落た雰囲気を出しています。
みなさんも服のボリュームを変化させることで、ファッションが変わることを楽しんで、デザインの匙加減の練習をしてみてください。


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